作り手の愛情が伝わる伝統の味
「笹巻」は庄内地方に伝わる伝統料理。もち米を笹の葉で包み煮た「ちまき」のことで、きな粉や黒蜜をつけて食べる、庄内地方・春の風物詩です。
庄内の中でも地域ごとに巻き方や味が異なる笹巻。灰汁水で煮た黄色の笹巻は鶴岡地区特有のもので、飴色に輝く色合いと、表面のぷるぷるとした食感が特徴です。
ほのかに栃餅に似た独特の風味が、香ばしいきな粉とよく合い、もち米だけとは思えない、上品な和菓子のような味わいが口の中に広がります。
2023年度の笹巻について
2022年まで清川屋の笹巻は、笹巻作り10年以上のベテランばばちゃん達に支えられ販売しておりましたが、高齢化に伴う人手不足や近年の原材料・光熱費の高騰に伴い製造の全てを見直しせざるを得なくなりました。
近年ますます作り手の数は減っておりますが、少しでも長くこの懐かしの味わいを皆様にお届けするべく努力してまいりますので、今後ともご愛顧のほどよろしくお願いいたします。
懐かしき手作りの味をもう一度
笹の葉の中から現れる、プルンとした黄色いわらび餅のような姿。きな粉と黒蜜をつけて頬張れば、もちっとした食感の中に、笹の香りと灰汁独特の味が広がります。ひな祭りや端午の節句の時期に合わせて各家庭で作られるため、これを食べると春が来たと思う方も多いはず。
「年取って改めて、旨い食いもんだなって思います。もち米と笹と灰汁水だけですから、素材の旨さが凄く感じられるんです」
代表の遠藤さんも幼い頃から鶴岡市櫛引出身のおばあさんが作る黄色い笹巻を食べて育ちました。全国屈指の大根農家である遠藤さんは、大根の農閑期を利用して笹巻作りを行っています。
原料のもち米「でわのもち」は、もっちりとした食感で味に深みがあるのが特徴です。それを灰汁水に約半日浸水させてから笹の葉で巻き、さらに灰汁水で3時間ほど煮込みます。お湯が冷めるまでおいておけば、プルプルとした笹巻の出来上がり。完成まで丸2日、手間ひまがかかります。
未来へと紡がれる伝統の技
作り手は、5名で笹巻つくりを分担しています。一番の若手はなんと20代の姉妹。遠藤さんの90歳にもなるおばあさんから指導を受けて、笹巻作りに携わっています。
「まだいぐさを巻くのが難しくて」と語りながら2人はゆっくり優しい手つきで丁寧に巻いていきます。当初は各家庭で巻き方が違うため出来上がりの形がバラバラだったそうですが、姉妹を中心に同じ規格で巻くように練習を重ねたそう。手作業ならではの微妙な形の違いに温かみを感じられます。
こだわりの絶品きな粉で召し上がれ
いぐさをほどく楽しさと、噛むほどに広がる素朴なもち米の奥深い甘さがいかにも山形らしい食べ物ではないでしょうか。出来立ての柔らかな風合いを感じるには、お湯で煮て冷ますか、軽くレンジで温めるのがおすすめです。
笹巻に欠かせないきな粉には、庄内町跡地区産の在来種「黒神」と呼ばれる青大豆を使います。豆の風味が豊かで知る人ぞ知る絶品のきな粉。黒蜜とともに、ぜひたっぷりと絡めてお召し上がりください。
美味しいお召し上がり方
〈笹巻の温め方〉
①鍋に笹巻を入れ、全体が浸るくらいの水を入れます。
②①の鍋を火にかけ、水が沸騰したらすぐに火を止めます。
③鍋に入ったまま、熱を冷まします。
④冷めたら水切りをして出来上がりです。
〈美味しいお召し上がり方〉
①笹巻の中央で結ばれている紐をほどきます。
②お召し上がりの直前に笹を剝いてください。
(灰汁水で煮ているため、中のもち米は飴色です)
③付属の黒みつを笹巻全体につけます。
④お好みできな粉や砂糖をかけて召し上がれ。
(甘みが足りないと感じる場合はお好みで砂糖や黒砂糖をかけてお召し上がりください)