困難を乗り越え咲く、希望の刈屋梨
2025年4月、鳥海山の麓に広がる一面の梨畑。苦難を乗り越えて咲き誇る可憐な白い花は、今年ひときわ美しく私たちの目に映りました。
「刈屋梨」のブランドで知られる和梨の名産地・酒田市刈屋(かりや)地区。日向川と荒瀬川という、2つの川に挟まれたこの地は、鳥海山から運ばれる栄養豊富な土と雪解け水に恵まれています。そこで育った梨は「一度食べたら、他の梨には戻れない」と言われるほどの人気で、秋になると全国から多くのファンが訪れます。
しかし、2024年7月25日に庄内地方を襲った豪雨により、荒瀬川が氾濫。多くの園地が土に埋もれ、収穫間近だった梨畑は無残な姿に…。

清川屋と長年お付き合いのある生産者・土井正幸さんは、変わり果てた畑を見て「40年近くやってきたが、こんなことは初めてだ。これから、どうなるんだろう…」と不安を漏らしていました。
水が引いた後には、土砂や流木、農機具などが崩れた梨棚に絡まり、ショックな光景が広がっていました。
少しでも力になれればと、清川屋スタッフも撤去作業に参加。泥をかき出したり、ゴミを取り除いたり…。少し作業しただけで息が上がり、思った以上の重労働でした。
》「<清川屋座談会>いま、山形で起きていること。②」ブログもご覧ください

それでも、生き残った梨を丁寧に収穫しながら、畑の復旧作業に取り込むこと約半年。まだまだこれから片づけないといけないものがたくさんあるとは言うものの、春にはようやく、以前の刈屋らしい美しい風景を取り戻すことができたのです。

実りの秋に向かって 刈屋梨、生育中!
6月中旬、土井さんの梨畑を訪れると、ピンポン玉ほどに膨らんだ果実が実っていました。「水に浸かった畑も、元気に生(な)てんでろ?」とはにかむ土井さん。
一部の畑では栽培を断念したものの、残された木々に、より良い実をつけるため、摘果に力を注いでいます。
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近年顕著になる気候変動。果樹栽培の難しさへの想いを尋ねると、土井さんは「今できることを精一杯やるだけ」と笑顔で答えます。
今秋には新しい苗木を植える予定だという土井さん。ちゃんと実るようになるまで15~16年はかかるため、次世代の刈屋梨農家への投資でもあります。
そんな土井さんの姿に私たちも力をもらいながら、今年の秋は刈屋梨に思いっきりかじりついて、あのみずみずしい果実を全身で味わいたい――そう強く思わずにはいられません。