日本最古=世界最古!?樹齢120年の“古木”奇跡のラ・フランス

日本最古の古木ラ・フランスを追って

日本にラ・フランスがやってきて今年で約120年。原産国フランスでもほとんど栽培されていないなか、山形に樹齢120年近くになる古木のラ・フランスがあるらしい―

そんな噂を確かめるため、清川屋スタッフは高畠町・佐藤さんの果樹園へ向かいました。

迎えてくださったのは古木のある果樹園の園主、佐藤家八代目・佐藤尚利さん。高畠町三条目地区でラ・フランスをはじめとする西洋梨やさくらんぼ、りんごなどを栽培する農家さんです。

果樹園のある高畠町三条目地区は、江戸時代から和梨の産地として栄えた地区です。
山形県から試験的に配られたラ・フランスの苗木が植えられたのは明治36年頃のこと。佐藤さんの果樹園にはこのときに配られたラ・フランスの樹がまだ4本残っており、樹齢はなんと約120年!

この頃、全国各地でラ・フランスの苗木が配られ栽培を試みたのですが、環境が合わないなどの理由で多くが切り倒されてしまったそう…。
つまり、佐藤さんの果樹園にあるラ・フランスの樹は日本に現存するものとしては最古。原産国・フランスでもほぼ絶滅状態ということから、もしかすると世界最古(かもしれない)とてもとても貴重な古木なのです…!

写真中央が樹齢120年近くになる古木のラ・フランス。
佐藤さんの果樹園には樹齢80年ほどのラ・フランスも現役で残っているそう。どの樹にも貫禄が感じられます。
近くで見るとこんな感じ。幹の中央部分が裂けていました。木肌にも歴史を感じます。

なぜフランス生まれのラ・フランスが山形に?

ここでちょっとこぼれ話。
どうしてフランス生まれのラ・フランスが、山形にやってきたのでしょうか?

明治時代に「殖産興業」という政策があったのをご存じでしょうか。色々な産業を発展させ、西洋諸国に並ぶ富国強兵を目指そう、というのが明治政府の考えでした。
その政策の一環として、農業も様々な作物を西洋から輸入し、西洋に負けない美味しいものをたくさん作っていこうぜ!ということになり、政府が様々な果樹の苗を輸入し、日本各地の土地で試験的に栽培を始めたのです。

当時の日本には在来のぶどうや桃、和梨、柿やみかんなどが既に作られており、甲州のぶどうなどの名産地もありました。そこで、輸入した苗を植えるのは、その品種に似たものを作っている土地がよかろう、ということで、江戸時代から和梨の名産地として知られていた高畠町三条目地区に、洋梨であるラ・フランスの苗が配布されたのです。

「・・・とはいえ全国各地に同じような名産地があったでしょうから、全国にラ・フランスの苗が何本か配られて植えたけれども、結果山形のラ・フランスが残ったんでしょう」というのが佐藤さんの見解。

※余談ですが、山形の名産さくらんぼや、長野や青森のりんご、岡山のマスカットぶどうなども同様にして輸入され広まっていった一因と言われています。

歴史ある古木のラ・フランス その特徴は?

話を戻して佐藤さんの果樹園で今も育つ120年ラ・フランスについて。
古木のラ・フランスは原種に近いため、非常にサビ(=果皮にできる褐色の斑点)が多いといいます。
とはいえ、できるだけサビが少なく見た目のよいラ・フランスに育てたい・・・そこで佐藤さんは果実ひとつひとつに袋がけを行うことで、サビを抑え、見た目よく育てているのだそう。
袋がけは地道な作業ですが、病気を防ぐ役割もあるので、その年の天候や気温に応じて2種類の袋を使い分けているそうです。

120年ラ・フランスは黄色の袋がかけられていました。遮光性が高くきれいに実るのだとか。
白色の袋は通気性が良いそう。
状況に応じて袋を変えて管理しているそうです。

「大きく育てれば育てるほど、樹は栄養をたくさん欲して土が痩せ、結果木が疲れて長生きできない。今まで古木が生き残ってきたのは、小さく剪定していたからだと思うんです」と佐藤さん。
佐藤さんの果樹園では基本的に枝を長く伸ばさず、ある程度伸びたら枝をきり、別の枝を伸ばすので、主枝の長さは変わらず樹形が小さいのが特徴。古木も直径3メートルぐらいの大きさです。

いわれてみると確かに小ぶりかも?

肥料もその年に使った分だけを足していく、という考えだそうで、最低限の有機質肥料等にとどめているそう。「石灰などもやりすぎると土に溜まって土が固くなるからやらないんだ。あまり手をかけないほうがよいようなんです。」

古木に実る「120年ラ・フランス」はL~2Lサイズと小ぶり。しかも、収穫量はシーズンを通して300~多い年で500玉程度と少なめです。
昨今のラ・フランスは昨今は品種改良でサビが少なく大玉で糖度が高いものが増えており、さらに樹齢の若い木はシーズン中600~700玉は収穫できることを考えると、決して採算性が良いとは言えません。しかも、樹齢120年近くと樹力が弱いぶん、病気もしやすく管理も大変・・。

それでも佐藤さんが古木を大事に守り育て続けるのは、「昔ながらのラ・フランスの味、高畠のラ・フランス栽培の歴史を大切にしたいから」。

山形ラ・フランス120年の歴史と文化を感じつつ味わいたい逸品。2023年秋の新商品、まもなく販売開始です。