冬こそ熱い大山の酒【第二蔵・株式会社渡會本店】

大山地区で唯一、酒造資料館も併設している渡會本店さん。
最近は外国のお客様もよくいらっしゃるそう

日本酒を知りたいならまずここ!酒造資料館のある「渡會本店」

こんにちは、毎晩晩酌が欠かせない、清川屋の渡部です。30代を過ぎて、段々と飲むようになったのが日本酒。しかし、いざ酒屋で買おうとすると、何が良いのか迷いませんか?

ビールより圧倒的に種類が多い上、お酒のラベルには、純米吟醸?出羽燦々?山廃仕込み?謎のワードがたくさん・・・そんな日本酒初心者にぜひおすすめしたい酒蔵が「渡會本店(わたらいほんてん)」さんです。

渡會本店さんは、大山地区で唯一、酒造資料館を併設しており、お酒の歴史から作り方、試飲まで全部教えてくれます。
酒造資料館は有料なのですが、入場料200円は破格すぎる価格じゃないでしょうか。

酒造りの町・鶴岡市大山地区

鶴岡駅から車で20分ほどの場所にある大山地区は、江戸時代から続く酒造りの町。
江戸時代に天領(幕府直轄地)だった大山地区は酒税が他より安かったのと
地下水が豊富だったこと、庄内平野の米どころに囲まれていたこと等が重なって
多い時で40軒もの酒蔵が軒を連ねていたそうです。
今も大山地区には4軒の酒蔵が残っており、どこも新酒仕込みの真っ最中。
お忙しい中、取材にご協力いただきましてありがとうございます。

仕込みはどれも気が抜けない作業。真剣なまなざしで仕込みます。

「生酛(きもと)づくり」に現れる、美味しい日本酒への誇り

渡會本店さんの創業は古く、1620年頃に酒造りを始めました。
「初代は伊勢(現在の三重県)辺りから北前船でやってきた商人だったようです。酒造りにはお金がかかるので、商人や地主なんかの財ある人が酒造業を起業することが多かったみたいですね」と話すのは、渡會本店18代目の渡會俊仁さん。

「今のお酒の市場は、ストロング系のアルコール度数の高い商品と、アルコールの低い商品とで二極化が進んでいます。なので、今までにない低アルコールの日本酒を作ろうと思っているんです。いずれはノンアルコールや10%以下の低アルコールの日本酒。健康効果が期待できる麹を使った商品(甘酒など)を開発していきたいと考えています。」と語る渡會さん。今まで通りの日本酒だけ作っていては、いずれ日本酒は廃れていく、という強い危機感と、新しいお酒造りの意欲をビシビシ感じます!

さて、渡會本店さんでは「生酛造り(きもとづくり)」という製法が主流です。
日本酒は、蒸したお米、水、麹(デンプンを糖に発酵させる菌がついた米)、酵母(糖をアルコールに分解させる微生物)、乳酸菌(麹と酵母以外の雑菌を増やさないための菌)を混ぜて発酵させて作ります。これらの材料や発酵時間などを変えることで日本酒の味わいを表現していくのが酒蔵の腕の見せ所。

その中で優良な乳酸菌は、これが無いと他の雑菌が繁殖して酒が腐ってしまう原因になるので、重要な役割を持っています。

現在では人工的に作った乳酸があるので、ほとんどの日本酒造りでは人工の乳酸を加えて作ります。しかしあえて乳酸を入れず、酒蔵内に自然に自生する優良な乳酸菌が酒母に入っていくのを待って発酵・酒造りを行うのが「生酛造り」です。

自然の乳酸菌は、働きがゆっくりなので、日本酒を仕込む時間も長くなりますし、雑菌が入らないようにする管理も人一倍大変なのですが、その分豊かな香りと濃厚な旨味のある日本酒に仕上がる利点があります。

日本海の日本酒の良さを広めたい―これからの挑戦

早速酒蔵にお邪魔します。ただいま酒蔵は現在仕込みの真っ最中!蔵中に炊いたご飯のいい匂いが充満しています。
まずは、お米を巨大な蒸し器でどんどん蒸し、蒸し上がったら広げて冷まします

巨大すぎる蒸し器!
アツアツの蒸し米を広げて冷ましていきます。

蒸したお米は2つのグループに分けられます。
1つは、麹室という暖かい小部屋に持っていき、蒸したご飯をよくほぐし、麹菌をかけて、どんどん麹菌を増やしていきます。これが「麹」になります。

もう1つは、小さなタンクに蒸したご飯と水、酵母を混ぜて酒母(しゅぼ)と呼ばれるものを作ります。本来ならここに乳酸を混ぜて雑菌が混ざらないようにするのですが、渡會酒造さんが行う生酛造りでは入れず、自然に優良な乳酸菌が入り込むのを待ちます。

最後に、出来上がった麹と酒母、そしてさらに蒸したお米とお水を追加して発酵を促していき、日本酒になっていくのです。
作り方は単純ですけれども、麹も酵母も生き物のようなもの。暑すぎても死んでしまうし、寒ければ発酵が進まないとのことで、麹や酒母の発酵具合によって細かく温度管理が必要で、気を抜けない作業が続きます。

「「一に麹、二に酒母、三に造り」とは言われますが、正直どの作業も大変です。でも、搾ったときにいい酒が出来た!と感じた時はもう一番うれしいですね」

酵母を育てるうえで重要な「酒母造り」。雑菌が入らないよう細心の注意が必要です。

通から初心者まで楽しめる充実のラインナップ

渡會本店さんの銘柄は、用途に応じて大きく3つに分けられます。
■出羽ノ雪(でわのゆき)
最も歴史が古い銘柄で、伝統的な生酛造りでの製法がベースになっているお酒。
渋みのある辛口が、常連客を中心に根強い人気を誇ります。
■和田来(わたらい)
平成になってから生まれた銘柄で、お米にこだわり、お米の銘柄ごとに仕込んでいるのが特徴です。
■庄内美人
最も近年に発売した銘柄で、誰でも飲みやすいようアルコール度数をやや低めにしたり、甘酸っぱくしたりと、親しみやすく改良したお酒。

うーん・・・どれも気になりますがおすすめの新酒はありますか?と聞いたところ、「初めて日本酒を嗜まれる方もいらっしゃるかと思うので、庄内美人シリーズから試してみてはいかがでしょう。香りがあって飲み口も軽いので飲みやすいと思います。飲み方を変えたいときは、温めてお燗酒にしたり、もしくは炭酸で割るとちょっと風味が変わって美味しいですよ」日本酒ハイボール!?お味が気になります。

「日本酒には色々な味わい方や楽しみもあるので、それを広く知っていただけたら嬉しいです。また海外でも嗜む方が増えてきたので、もっとグローバルに日本酒が広がるといいなと思います」と話す渡會社長。資料館を訪れる海外の人も年々増えているのだそうです。

今回、渡會本店さんの庄内美人シリーズから「庄内美人」と「鶴岡美人」という二つのお酒を新酒でご紹介します。搾りたてフレッシュな味わいが生酒の醍醐味!今だけの味を楽しんでみてくださいね♪

冷や(常温)で試飲しました。グラスの色が反映されていますが、実際のお酒の色はどちらも無色透明です。

いざ、試飲!

まずは「鶴岡美人」から!
山形で2004年に生まれた「出羽の里」という酒米で仕込んだ純米吟醸酒です。吟醸酒というのは吟醸香と呼ばれるフルーティーな香りが特徴なのですが、このお酒はそこまで香りが強くないです。渡部個人的には吟醸酒の華やかすぎる香りが多少苦手なのでこれは嬉しい。飲み口は軽くあっさりしていますが、後からほんのり酸味と甘さを感じるので不思議と飲みごたえがあるお酒です。「日本酒は辛口派なんだけど、このぐらいの甘さがあっても美味しいね」と夫も◎。もずく酢と食べたらこれは合う!さっぱりしたおかずよりも濃い目のおかずの方が合うかもしれませんね。

お次は「庄内美人」!。
山形県産の「出羽きらり」と「美山錦」という2種類の酒米を使って醸した日本酒です。飲んだ瞬間、うーん…これはまさに淡麗辛口!香り控えめでさっぱりした飲み心地~と思っていたら最後に米の甘いような香りがフワッときて、あれっただの淡麗辛口酒じゃない・‥なんだろう?と思わせる魔性の日本酒(気になってもう2杯飲むことに)。ちなみにアテがたまたま鶏の唐揚げだったのですが、これが凄くよく合います!脂っぽさを辛口酒がさっぱりさせてくれるので、ついつい食べすぎてしまうので試す方はご注意ください。今回試せなかったのですがお燗にしたらまた美味しくなりそうです。

あくまでスタッフ渡部家の個人的な感想です。冬は本当に日本酒が楽しい季節ですね。皆さん自由にお楽しみくださいませ♪

しぼりたて生酒 純米吟醸 鶴岡美人

山形県産「出羽の里」を原料米にして純米吟醸を醸しました。
透明感のあるハツラツとした口当たりとフレッシュなのど越し。この時期だけの味わいです。


生もと 純米新酒 庄内美人

山形県産「出羽きらり・美山錦」を原料米にして生酛純米酒を醸しました。
新酒100% 新酒のこの時期特有の香り高くハツラツとした軽快な味わい。生もとならではのお米の風味をお楽しみください。


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渡會本店

創業380余年、鶴岡市大山の地で酒造りを生業として継承しています。代表酒の「出羽ノ雪」は全国新酒鑑評会で4年連続金賞受賞しています。

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