
「ミ・キュイカカオ」が生まれたのは2021年の初春、バレンタイン目前のこと。
清川屋は2018年頃まで、山形市のレストランで作る「ミ・キュイ」という名前のチョコレートケーキを販売しており絶大な人気を博していました。しかしレストランの閉店に伴い惜しくも終売。
それからというもの「もっと美味しいチョコレートケーキを作りたい」という意見が絶えませんでした。
そんな会社の期待を一身に背負ったのは、茶屋勘右衛門の名物菓子である「雲ショコラロール」や「GASSANパイ」などの新商品を生み出してきた実績を持つパティシエ・皆川さん。
皆川さんはかつてのミ・キュイを超える全く新しいミ・キュイを考えなければならないことに…!
今回は、改良を重ねてさらに美味しくレベルアップした「ミ・キュイカカオ」の制作秘話について皆川さんにお話を伺いしました♪
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●パティシエ 皆川さん
2017年入社し、店舗スタッフを経て茶屋勘右衛門の新商品開発に伴い、清川屋の菓子開発部門へ。
前職ではパティスリーにて接客と製造に従事していました。
カカオを楽しむスイーツを作るには……?開発は試行錯誤の連続!

当時の「ミ・キュイ」はホール型で慎重に焼き上げられた、外側サクサク、中はトロリとなめらかな食感のチョコレートケーキ。
それに対して皆川さんは、「ショコラテリーヌ」という濃厚なチョコレートの風味と舌触りが魅力のフランス菓子から着想を得て、開発を進めることになりました。
「ミ・キュイカカオ」の開発は、チョコレート探しから始まります。
甘さじゃなく、カカオを楽しむスイーツにしたかったと話す皆川さん。
ちょうどその頃、運命的なチョコレートに出会います!
カカオ分70%オーバーの力強い味と深煎りのアーモンドや、ヘーゼルナッツを思わせる豊潤な香り……「求めていたのはこれだ!」と、皆川さんすぐに確信したのだとか。
意外にあっさりと完成したんですね……と気を抜いたとき、
「そこからが大変だったんですよ!」
と、思いのほか強い言葉が返ってきました。

そう、「ミ・キュイカカオ」開発にあたって一番難航したのは、ケーキを焼成するための「型探し」でした。

チョコレート菓子は量をたくさん作ると、どうしても味がブレやすいんです。
本格的に製造を開始するには道具の見直しと、ぴったりの型が必要不可欠なのですが、この型探しが難航を極めたのです。
熱は勿論、油分、水に強いことに加え、大きさや使いやすさ。さながら理想が高すぎる婚活のよう!今の器を見つけたときはほっとしましたね(*^^*)
と当時を振り返ります。
ご家庭で1本のケーキを作るのであれば、サイズを合わせたクッキングシートを型にタネを流し入れて焼成し、シートを剥がして、箱に入れてラッピング……ということが出来ますが、大量生産ともなると少しでも生産効率を上げるためにぴったりの道具が必要不可欠なんですね……!
そして、「ミ・キュイカカオ」を調理するにあたってのポイントとなるのが
①チョコレートとバター ②卵と砂糖
これらをそれぞれ湯煎で溶かし混ぜて、②の卵+砂糖をザルで濾しながら①のチョコレート+バターに入れる際に、①も②も同じくらいの温度にすることがポイントの1つ。



何でも、材料がバター、チョコ、卵、砂糖だけなので、材料を入れるタイミングや温度湿度によって仕上がりが変わっちゃうのだとか……∑ヾ(;゚□゚)ノ
①と②全体を混ぜ合わせる際にもハンディフードプロフェッサーでつやが出るまで乳化し混ぜ上げることが、「ミ・キュイカカオ」の魅力の1つでもある出来上がりの食感のなめらかさに直結するようです。
湯煎する際にも、①のチョコレート+バターは湯煎の温度を上げ過ぎると焦げて”ざらつき”の原因になってしまったりと、注意する点はたくさんあるようです(><)

ちなみに、そうやって焼き上げられた「ミ・キュイカカオ」、焼成したてはプリンのようにふるふると揺れるような柔らかさなのだとか。
主成分がチョコレートなのでそのまま冷えると固まり、私たちの知っている「ミ・キュイカカオ」になるのですが……
…出来立てぷるぷるの「ミ・キュイカカオ」、出回ることは決して無いとわかっていながらも、ちょっと食べてみたいですね(*´艸`*)
リニューアルでさらに美味しく…!知ってもらいたい、新たな口どけ。


新商品開発部門に配属されて5年、レシピノートは6冊目です。今もいくつか新しいお菓子やリニューアルのレシピを試作しているんです。
……と皆川さんが語るように、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、実は「ミ・キュイカカオ」は2024年の夏にリニューアルをしています。
大きな変更点としては、「小麦粉不使用」なこと。
それに加えて改めてレシピを見直し、卵とバターの量はそのまま砂糖を減らし、チョコレートを増やしました。より強くチョコレートの味や香りが強く感じられ、それでいてより滑らかな食感に仕上がっています!


でも正直、夏って濃厚なものはちょっと避けがちじゃないでしょうか?
夏以降、まだ食べていない方も多いと思うんです。だからこそ今、ミ・キュイカカオを楽しんでもらえたら嬉しいです。
と打ち明ける皆川さん。
確かに、夏に半解凍で冷たく食べても美味しい「ミ・キュイカカオ」ですが、
やはり名前の元となった「半分火が通った、半生」という意味のフランス語の「ミ・キュイ(mi cuit)」……
つまり“半生の不思議な食感”の状態をフルで楽しめるのは、濃厚で甘いものがついつい欲しくなってしまう、冬の今なのかもしれません!
バレンタインに向けて、今後もさまざまなチョコレート商品の紹介を予定している清川屋。
そんな清川屋でしか買えない、且つ リニューアルでさらに美味しくなった「ミ・キュイカカオ」を、今年は特別なあの人やご家族、または自分へのご褒美に贈ってみてはいかがでしょうか?