祝!国登録無形民俗文化財に登録。山形の伝統の味を繋げたい…!笹巻講習会に行ってきました

もちっと食感と笹の香り、「笹巻」って知ってる?

こんにちは、清川屋の和嶋です。
今年の山形は、例年にないほど雪が無く、春の訪れが早くなるのではないかと感じさせますね。
私が「春」と聞くと、どうしても思い浮かべるのが、「笹巻」です。

「笹巻」をご存知ない方、いらっしゃいますでしょうか?
簡単にご説明すると、山形県内では、笹の葉でもち米などを巻いた「笹巻」が端午の節句を代表する食べ物です。
特に庄内南部に位置する鶴岡市で伝統的に食されてきた笹巻は、木灰を水で煮だしたうわずみ液である、強アルカリ性の灰汁(あく)を吸わせたもち米を笹で巻いて煮たものです。
笹の中身は、もち米同士が溶解してくっつき、半透明の黄色のゼリー状になり、もっちりとぷるんとした食感になります。それを砂糖、黒蜜、きな粉をつけて食べます。
一方で、酒田市や遊佐町などの庄内北部地域では灰汁を吸わせない、中身が白の笹巻が一般的です。

笹の形も様々あり、一般的な三角形やつの巻き(たけのこ巻き)やこぶし巻きなど様々な巻き方が存在します。

弊社で扱っているのは、鶴岡で伝統的な三角形の灰汁で煮た黄色い笹巻になります。

実は注目されている!?鶴岡の「笹巻」

鶴岡の「笹巻」は、2023年3月には文化庁の「100年フード」に認定されました。
「100年フード」とは、我が国の多様な食文化の継承・振興への機運を醸成するため、地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化を文化庁が認定しているものです。

また令和6年(2024年)3月21日に鶴岡市を含む庄内地方で製造されている「庄内の笹巻製造技術」が国登録無形民俗文化財へ登録されました。

「庄内の笹巻製造技術」の国登録無形民俗文化財の登録について(鶴岡市HPへ)

講習会の会場のある「農園貞太郎」さん。ロケーションが最高です。

手作りの味をもう一度、「笹巻講習会」にお邪魔しました!

注目を浴びる一方、笹巻の製造技術は年々失われつつあります。笹巻の作り手の高齢化や担い手不足による技術継承、材料の確保などが大きな課題となっています。

弊社でも長年お付き合いをしてきた作り手が、一昨年に製造をやめるとの一報をうけ、昨年からは、新しい作り手とタッグを組み、技術の継承等を進め、販売の継続をしてきました。

しかしながら、作り手が異なれば、作り方も異なる。いろいろな人に作り方などを話を聞きながら、試行錯誤を続けましたが、品質の一定化に苦慮し、前の笹巻と違い過ぎるのではとのお声をいただいたりもいたしました。

特に「笹巻の巻き方」について、技術を要するところであり、巻き方がかっちりなってないと仕上がりにも大きく影響します。

そこで、今回は鶴岡の櫛引地区で笹巻を巻いている方を講師としてお迎えし、笹巻の講習会を行いました。

場所は、去年から笹巻でお取引を開始した「農園貞太郎」さんです。
「農園貞太郎」さんは、庄内平野を拠点としている農家さんで、お米や大根などを生産しており、安心・安全でかつ環境に配慮した持続可能な農業に取り組んでいます。

近くには、鳥海山も見えます!ロケーション最高。
伝統的な食文化を守っていきたいと一緒に取り組んでいただいています。

シンプルだからこそのこだわり!素材の美味しさを活かすための下準備

ここで笹巻の材料を紹介。
もち米、笹の葉、灰汁水(灰汁)、い草この4つでできています。いたってシンプル。

もち米は、あらかじめ灰汁で浸して置き、水気を切ります。灰汁の影響で少し黄色がかっています。もち米は、「でわのもち」を使っています。もっちりとコシが強く、歯ごたえがあり、旨みのあるもち米です。

笹の葉、い草は、収穫し乾燥させたものを沸騰したお湯に短時間つけて戻したものです。戻したものを1枚1枚丁寧に拭いて準備しておきます。地元の山で取れたものです。

灰汁は、あらかじめ木灰を煮出し、上澄みを取ったものを使用します。使う木灰は、広葉樹(楢、樫など)の灰が良いとされ、特に柿の木を燃やした灰が良いとされているようですが、柿の木の灰もなかなか入手が難しく、広葉樹の灰を使用しています。強アルカリ性なので、ちょっと舌でなめるとビリビリします。灰汁の強さにより、笹巻の仕上がりの良し悪しに影響してきます。

とまあ、今回は下準備はすべて済ませてもらっていたのですが、下準備をするのにもかなりの手間と時間がかかっているんですね。

コピー用紙を用いて笹で巻く練習。細かいコツまでしっかり教えてもらえます。

いざ!笹巻づくり開始♪

早速、笹巻の開始。と思いきや、講師から「コピー用紙ありますか?」との声。
何かなと思ったら、笹の葉の巻き方のコツ「角の作り方」をコピー用紙でレクチャーしてくれました。角がしっかり作れていないと中のもち米が飛び出してきたりして綺麗な笹巻が作れない。角をしっかり作って、中身が飛び出してこないようにするのがポイントと教えてくれました。

笹の使い方も重要で、1つに2枚使うのが基本。小さくてもダメで、大きすぎてもダメ。大きさのあんばいの良い大きさの笹を選びます。笹の葉の表面と裏面を見極めて、笹の葉の裏面が笹巻の表面にくるようにするのだそう。2等辺三角形をつくっていきます。
くるっと回して、角を作ることを意識して、笹の葉でポケットを作ります。
一定の量を入れるために、容器に擦切りでもち米をはかり、入れていきます。
もち米を入れて、笹の葉を織り込み、ここもしっかり角がつくれていることを確認し、い草で縛っていきます。
皆さんは簡単に縛っているのですが、私は何度聞いてもうまく縛れず。。。 

この厚みがもちもち食感の最後のポイント♪

縛った後に、笹巻をポンポンと叩き、ちょっと平らにして仕上げます。
厚い所と薄い所があると、ゆで上げた際にムラが出るため、最後のポイントだそうです。

そして…完成!私は1つ作るのに、5分程度かかりました。
熟練になると、1時間で100個程度作れるそうです!驚き!!
本来だとここから、笹巻を茹でて、一晩つけて置きます。
翌日冷めてから、水をよく切り、きな粉や黒蜜、黒砂糖などの付属品と一緒に袋詰め、箱詰めしていきます。

今回は、煮方はやりませんでしたが、灰汁の煮出し方や強さの目安、笹巻の煮方についても口頭で熱心に質問していました。

和気あいあいとした笹巻づくりの風景

色んな人に「笹巻」を食べてもらいたい…!職人さんたちの想い。

講習会はここで終了になりましたが、今回参加して笹巻の巻き方を聞き、改めて出来るまでこんなにも手間がかかるかと驚くばかり。「手間暇を考えっど、ただのお菓子じゃねぐって、高級和菓子だの!」と声を漏らす作り手。まさにその通りだと感じました。

「私(わだし)だちも頑張てつぐっがら、いろんな人さ笹巻を食べでもらって、春をかんじでほしの」と言っていました。

笹巻を巻きながら、おしゃべりも絶えず、和気あいあいとした講習会でした。
昔の人も、笹巻を巻きながら、おしゃべりをしながら作業をしていたと思うと、笹巻を作るのが一つのコミュニケーションの場になっていたのではないかなと感じました。

いよいよ今年も、笹巻の販売を開始します。
去年の反省を元に品質の向上、安定化をはかり、美味しい笹巻をお届けしたいと思います。
今年は、付属品に黒糖も復活させました。
灰汁の独特の風味をやわらげ、よりおいしく笹巻をお召し上がりいただけます。
 
山形の春の風物詩。ぜひ、ご賞味ください!

この記事で紹介した商品はこちら

手づくり笹巻 10個入

「笹巻」は庄内地方に伝わる伝統料理。もち米を笹の葉で包み煮た「ちまき」のことで、きな粉や黒蜜をつけて食べる、庄内地方・春の風物詩です。
庄内の中でも地域ごとに巻き方や味が異なる笹巻。灰汁水で煮た黄色の笹巻は鶴岡地区特有のもので、飴色に輝く色合いと、表面のぷるぷるとした食感が特徴です。

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