一粒に込めた「優しさ」の魔法。さくらんぼの花が満開の日の手仕事

さくらんぼの授粉作業をおこなうとうかがい、4月17日、寒河江市の「軽部さくらんぼ園」の紅秀峰(べにしゅうほう)の畑に清川屋スタッフがおじゃましました。

お話を伺ったのは、情熱を持ってさくらんぼ作りに励む軽部賢太さん。
4月中旬、ちょうど満開を迎えたハウスの中での「授粉作業」をたっぷり見学させていただきました!

100メートル続く「紅秀峰」の楽園

賢太さんの園地に入って驚くのは、その広さです。
「奥までずっと紅秀峰なんですよ。だいたい100メートル弱あります」と語る通り、視界を埋め尽くす白い花は圧巻でした。

さくらんぼの花でいうと、全体的に見て8割ぐらい咲いた状態を、俗に満開と言います。下の方は日当たりの加減で咲くのが遅いですが、栄養が先にいく先端の方から早く咲き始めるそうです。

この「満開」のタイミングを狙って、最も重要な受粉作業が行われます。
当日は、温度も15度以上と丁度よく、風もあまりなかったので絶好の授粉日和でした!

※満開(八分咲き)の紅秀峰の畑

成功の秘訣は「ハチ」と「人の手」のハイブリッド

近年、さくらんぼがなりにくい傾向があることから、昨年より「人工授粉」を20、30年ぶりに再開したそうです。

さくらんぼは、異なる品種の花粉が受粉することで実を付けます。例えば「紅秀峰」を実らせるには、「高砂」や「佐藤錦」といった他品種の花粉が欠かせません。

この大切な受粉を担うのがミツバチですが、彼らは暖かな樹の梢(こずえ)付近を好んで飛び回る習性があります。そのため、放っておくと樹の下部まで受粉が行き渡らないことも。そこで軽部さんは、樹の下部に人の手で丁寧に受粉作業を施すことで、隅々まで確実に実が成るよう手助けをしています。

ハチの力: リースしたミツバチたちが活発に飛び回り、高い場所の受粉を担当。

人の手: 2メートル以下の「実がなりにくい場所」を重点的に、花粉を花粉交配機で一つひとつ丁寧にタッチしていきます。

「コツは全くないですよ。ただ気持ちを込めて『しっかりなってくれよ』と優しくやるだけです」と笑う賢太さん。その優しい手つきに、一粒一粒への愛情が透けて見えました。

※腰につけて作業できる花粉交配機(名称:ラブタッチ)
※授粉作業の様子
※ピンク色になっているのが人工授粉後の花(見えやすいようにたくさんつけていただきました)
※受粉樹(高砂)をバケツに入れて、枝につるし自然受粉を促す対策もしています

紅秀峰への衝撃が、今の原動力

数ある品種の中で、賢太さんが最も愛するのはやはり「紅秀峰」。
「初めて食べた時の衝撃がすごくて、さくらんぼの概念が変わったんです。あのパリッとした食感と甘さは、一度食べると戻れなくなりますよ」

そんな賢太さんの夢は、お子さんたちにも繋がっています。
「子供が『さくらんぼを育てて、たくさんの人に笑顔を届けたい』と言ってくれるんです」
その言葉通り、園地には次世代を担う期待の新品種「やまがた紅王(べにおう)」の若木も受粉樹として力強く育っていました。

※軽部賢太さん

取材を終えて帰ろうとしていたところに、養蜂家さんがミツバチの巣箱を見にきてくれました。
おもむろにさくらんぼの花をもぎ取り、花びらをむしり始めました。彼は花をじっくり観察して一言。
「花の内部の水分が少ないな…。ミツバチはここの水分を求めて飛んでくるから、もっと水をやった方がいいぞ。水やりはどうしてる?」
軽部さんも「スプリンクラーは回していますが、もう少し増やしてみますか……」と真剣な表情。ミツバチの専門家だからこそ気づく視点がある。周囲のプロたちが持つ知識が合わさって、あの美味しいさくらんぼが作られているのだと実感させられる一コマでした。

「今年のミツバチはよく働いていて、箱が重い(蜜を溜めている)」と嬉しい報告も。
美味しいさくらんぼができる準備を、着々と整えています(^^)

確実な収穫に向けたプロの決断

さくらんぼのピーク時には、朝4時に起き、夜遅くまで作業が続くさくらんぼシーズン。
「大変だと思ったことはあまりない」と言い切る賢太さんの姿に、山形の農業を支える力強さを感じました。

紅秀峰は一つの箇所に多くの芽を付ける品種です。そのままでは栄養が分散し、一粒ひとつぶの味や大きさが損なわれてしまいます。
そこで、まずは「芽かき」で余分な芽を間引き、さらに実が成ってから「摘果(てきか)」を重ねることで、一粒に栄養を凝縮させます。この徹底した管理が、紅秀峰ならではの際立つ甘さと大きさを生み出すのです。

しかし軽部さんは、今年はあえて「芽かき」をせず花を多く残し、着果を確実にする戦略をとっているとのこと。実がついてから摘果を頑張る方針です。

実は、作業労力としては「芽かき」よりも「摘果」の方がはるかに過酷。それでもこの道を選んだのは、天候不順などによる不作を避け、お客様に確実に届けるためです。

「実って困るリスクより、実らないリスクの方が怖い」という言葉に、プロの覚悟を感じました。
6月、真っ赤に色づいた「赤い宝石」たちがたわわに実る姿が、今から待ち遠しくてたまりません!

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清川屋のさくらんぼ

ほおばれば口の中でプチッと弾け、みずみずしく爽やかな甘さ広がる、山形を代表するフルーツ、さくらんぼ。清川屋のイチオシは紅秀峰です。

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