「おみやげ」は、何を伝えているのか
こんにちは。清川屋の水野です。先日、山形大学農学部の授業でひとコマを担当しました。今回、出席してくれたのは、藤科智海先生(農業経済学)のゼミに所属する、6名の学生のみなさん。経済学の視点から「食」を多角的に学んでいるメンバーです。
この日、私たちが投げかけたのは、こんな問いでした。
「『おみやげ』は、いったい何を伝えているのでしょうか」
おみやげが伝えているもの。それは、おいしさでしょうか。旅先での思い出でしょうか。それとも、留守を預かってくれた人への気遣い……?

思い出を届けるおみやげ
授業の始まりに、「最近、思い出に残っているおみやげ」をたずねてみました。すると、返ってきたのはこんな答えです。
「北陸旅行の帰りに買った、富山名物のます寿司! とってもおいしかったんです」
「東京駅で買ったスイーツ。おいしいのはもちろん、見た目もかわいくておしゃれ。これぞ都会!と思いました」
「旅行で行った大阪のお菓子。クスッと笑えるユニークな名前に惹かれて買って、家族との会話も弾みました」
「幼い頃、家族と離島に住んでいたんです。久しぶりにその島へ行くことになったとき、母から頼まれた島名物のお団子をおみやげに買いました」
おみやげを選ぶ動機は人それぞれ。でも、「おみやげ=特産品」という形ある存在が、その土地の技術や素材、思い出やイメージを「ここではないどこか」へ届けている──。それが、彼・彼女たちのエピソードに共通していたことでした。

変化を迫られる山形のさくらんぼ
では、清川屋が扱っている「おみやげ=特産品」はどうでしょうか。山形の代表的な特産品といえば、さくらんぼ。今回の授業では、山形のさくらんぼと清川屋の取り組みを事例として取り上げることにしました。
私たち清川屋は、毎年全国のお客様へさくらんぼをお届けしていますが、近年の気候変動により、これまでと同じようなかたちでの供給が難しくなりつつあります。仕入れできる量が予定より大きく変わってしまったり、暑さのため輸送中に傷んでしまったりすることがあるのです。

いろんな品種の魅力を伝えよう!
そこで、今年(2026年)に清川屋が掲げたテーマは、「いろんな品種の魅力を伝えよう!」というものでした。県内のさくらんぼ生産量の約7割を占める佐藤錦は、山形を「さくらんぼの里」に育て上げた代表的な品種。しかし、ひとつの品種の偏りが環境の変化に対するリスクを高めてしまっているのです。
山形には佐藤錦のほかに、紅秀峰や紅てまり、紅さやか、やまがた紅王といった食感や風味の異なる魅力的な品種がたくさんあります。しかも、紅秀峰は皮がしっかりしているので、長距離の輸送にも耐えられるというメリットもあります。
これらの特長をお客様にお伝えしつつ、「あ、このさくらんぼもおいしいのね」と知ってもらうこと。その地道なコミュニケーションの積み重ねが、さくらんぼの里を次代へつなぐことになる、と考えました。

おいしい双子果とあたらしい加工品
もうひとつは、双子果(ふたごか)の存在です。高温の影響で実がふたつくっついてしまう双子果は、一般的に規格外として扱われてしまい、農家さんの悩みのタネとなっていました。
ところが、双子果は日当たりのよい位置になりやすく、「じつはとってもおいしいんです」という農家さんのお話に着想を得て、あえて規格外品として扱わない「軽部さんのふたごさくらんぼ」という商品を企画しました。初の試みとして30箱限定の企画でしたが、発売直後に売り切れ。召し上がったお客さまからは嬉しい感想も届きました。
さらに、規格外品のさくらんぼを活用したジェラートの製造や、国内では栽培の少ない加工用さくらんぼ(サワーチェリー)を使った商品開発など、まだ味わったことのない特産品を目指して、実験的な取り組みを続けています。

おみやげが伝えるのは「過去と未来への想像力」
山形にさくらんぼの苗が植えられてから150年あまり。時代の変化に対応できる新たな品種の開発には、20年もの歳月を要します。こうした時間的スケールを前に思うのは、「おみやげ=特産品」は先人たちが積み重ねてきた月日と、私たちの未来へのイメージが交差するところに生まれる、ということです。
旅先で出会う、ひとつのおみやげ。それが伝えているのは、この土地が歩んできた「歴史(これまで)」と、そこに暮らす人々が「こうありたい」と願う未来への希望や想像力です。

「これまで」と「これから」をつなぐ仕事
思い出に残っているおみやげの味と香り、素材、色、形、つくり方、包装容器、保存方法、値段……。これらを一つひとつ紐解いていくと、その土地の「これまで」と「これから」が自分事として感じられてきます。
だから、おみやげ屋さんは「これまで」と「これから」をつなぐ仕事。今回の授業を通して、そんなことを考えたのでした。
藤科先生のゼミのみなさん、ありがとうございました!

